動物病院の繁忙期が続いています
その際についでに、と言って処置を頼まれる事が多いのが外耳炎の治療
今日はその事について書いてみようと思います
一般的に外耳炎の原因として、アレルギー 脂漏症 寄生虫などが言われており、治療法としては主に点耳薬と耳洗浄、ときに内服薬が用いられますが、中々良くならず、再発を繰り返すのが現状です
何故か?今回は解剖学的構造から書いていこうと思います
一般的に耳の構造は図のように書かれることが多いのですが
簡略化すると、こんな感じ
頭蓋骨からL字状の管となって伸びています
ここで問題点としては耳道は
①頭蓋骨からL字に曲がっている
②更に先が行き止まりになっている
③耳道が細い
④また、犬の耳垢はワックスと水の複合体で石鹸などの界面活性剤では浮き上がらず、物理的に落とす必要がある
要するに、おそらく進化の過程で外から異物が入りにくい構造に進化したんでしょう
常識的に考えて、先が閉塞した長くて曲がったストローの中のオイル汚れを外から綿棒で掃除するのは困難であり、点耳薬にしても子供が眼から離れた所から目薬さすようなもの、あるいは先が詰まった排水管に洗浄剤を入れるようなもので上手く入れられないのが原因です
最近の獣医療の流れでは全身麻酔下で数百万円の内視鏡を使って複数回洗浄するのが流れになりつつあるのですが・・・
個人的には、はて?という感じです
そこでおすすめなのが、この手術
垂直耳道切開
耳道の曲がり角まで切開して開放してあげる術式です
要するに、こうします
実際の仕上がりは
こんな感じです
耳道をL字部まで開放する事によって
①耳道の長さを短くする
②耳の通気を良くする
③洗浄は容易で自宅で大部分の耳道を手でティッシュで拭きとれ、耳垢もつまんでとれちゃう
④薬を直接自分で指で正確に塗れる
わずか数センチの違いですが大きな違いとなります
もちろん、外耳炎はもともと全身的な基礎疾患が元にあって悪化しているので定期的な管理は絶対に必要になります
要するに外耳炎に対する武器のメインは洗浄と点耳薬
それをいかに有効に効かせるか、それに尽きると思います
あまりに進行してしまうと別の手術が必要となりますが、かなりの合併症のリスクを負う事になります
外耳炎というと皮膚科の症例と思われがちですが実は外科的対応を迫られる疾患です
結局、価値観の問題になってしまうのですが、耳や皮膚などの感覚器に痒みがあるのは非常なストレスになると思います
漫然と引っ張ることの多い疾患ではあるのですが
内科の限界が外科の適応ではありません
ご検討ください